財団設立趣意
日本企業はこれまで優れた経営者に率いられて、グローバル市場において外国企業を圧倒する競争優位性を獲得してきた。とはいえ、いくら優れた経営者であっても、すべての経営領域を担当することは困難であり、また経営者も生きた人間である限り、永久に経営を担当できる訳でもない。やがて世代交代を迫られる。ここに経営者個人の経験や知恵やカンに頼った経営ではなく、それらにあまり依存せずに合理的な経営を可能にする管理システムがこれまで以上に必要となる。合理的な経営に必要な会計情報を提供する管理会計は、そうした管理システムの中核を担っているのである。
日本における管理会計学の研究は、これまでアメリカ管理会計学をより深く理解し、多くの教育機会を通じてそれを日本企業へ普及するというキャッチアップ戦略をとってきた。実際、優れた日本企業では、ほとんど例外なく優れた管理会計実務が展開されており、独自の管理会計技法を開発した企業も少なくない。しかしながら、管理会計学のすべての分野においてほぼキャッチアップが終了した現時点において、日本の管理会計学研究が目指すべき方向は日本独自の理論を提唱するという目標へ向けて研究戦略を転換することであろう。
もちろんアメリカなど海外の最先端研究に今後もなお十分配慮することは必要であるが、より重要なことは、日本の管理会計学の研究対象を日本企業の管理会計実務に移すことである。そこはまさに解決すべき管理会計問題が頻発する会計最前線である。多くの管理会計研究者がそれと対峙して、管理会計研究を積極的に展開するならば、疑いもなく、やがて日本から世界に向けて独自の管理会計理論が多数提唱されることになるだろう。
株式会社メルコホールディングスは、牧誠社長による創業以来、パソコン関連機器の開発・製造・販売に関わるベンチャー企業として大きく成長してきたが、限られた人的資源、設備機器、資金を有効に利用し、合理的な経営を実践するために管理会計を重用してきた。ベンチャー企業のみならず、広くいかなる企業であっても、管理会計は有用かつ重要であると思われる。
かかる管理会計研究の現状とその重要性に鑑みて、株式会社メルコホールディングスは創業30周年を記念する社会貢献事業として、財団法人メルコ学術振興財団を設立することとした。当財団は、日本企業で実践されている管理会計実務(特に管理会計技法、管理会計システム、事業継承システム、それに関連する管理システム)を研究対象とし、その理論化を目指す研究に対する助成等を通じて、管理会計学の発展と普及、更にはわが国の学術及び文化の向上発展に寄与することを目的とする。